漢方医学総論
●漢方は、『各生薬とその組み合わせが、どのような症候や状態に対して、どのように作用し得るか』ということの理解です。諸理論や口訣は参照枠として上手に活用していきます。
口訣(くけつ)、とは、こういう状態にはこれが効く、という昔からの言い伝え。標語みたいなものです。
諸理論、には、気血水、五臓論、八綱、六病位、が代表的ですが、後に簡単に解説します。
診察の現場において、処方決定に最も大事なのは、顔色や声音を含めた外観の印象と、どのようにその人が困っているかという内容です。支障がなければ脈診、舌診、腹診などの診察をして、困りごとの事情を調べて、処方を絞り込んでいきます。
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●野猿が仲間の病気を治そうとして近くに生えている黄連を掘り採って、その根を病猿の口中に押し込む・・(「漢方概論」藤平健 p.17)とのように、動物的本能をもって自然の力を借りる、という感じです。野生大型類人猿のこのような行動は実際に多く観察されているようです。
参考:
医学の発生 真柳誠
野生チンパンジー薬草利用研究:成果と展望
チンパンジーの自己治療行動と人類の医療行為の進化
霊長類の自己治療行動̶予防と治療
東京大学総合研究博物館のサイトより
私の学生時代に京都で、大塚敬節に師事した緒方玄芳先生との御縁があり、陪席などさせて頂いていましたが、私の長引く風邪に煎じ薬を処方して頂いたことがありました。飲むと体に染み込むような体感がありすっと治った、という原体験を得ました。
『・・そんな漢方の本当の魅力を私が知ったのは、自身のアレルギー性鼻炎に対して小青竜湯を服用した、わずか十数分後のことだった。口呼吸を強いられるほどのひどい鼻閉に苦しむ我が鼻腔が、あっという聞に数倍に拡がって、心地よい鼻呼吸ができるようになった時のあの感動は、今も忘れない。』(証スクリプトで学ぶ こどものための漢方メソッド 髙村光幸 まえがきより抜粋) このような、実感の体験はとてもよくわかります。
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●架空症例を記載します。
38歳女性。生薬の動き、体感に敏感である。数年前、ストレス・緊張と連関して、「眩しくて目を開けているとひりひり痛い感じ」となり、菊花と枸杞子と茯苓末と紅茶葉を煎じて飲むと効く。身体の奥でしっかり重く降ろす茯苓と、表面で走らせる菊花。枸杞子は「なんとなく調和するような感じ」であるという。
菊花:表面の風熱邪(外から熱っぽい邪(悪)なものが入り込んでくる様相のこと)を取り払う、明目(目の具合をぱっとさせる)、解毒
枸杞子:滋補肝腎(滋養して底力を養う、というような意味)、明目
茯苓:健脾補中(お腹に元気を与えて調子を建て直すというような意味)、寧心安神(心を安らかにさせる)
紅茶:祛風(体の表面の病的なものを取り去る)、清爽頭目(頭や目を清く爽やかにする)
最近は上記の症状はないが、何かを懸案していると、頭頸部に「ぽわーとした不快な感じ」「頭が軽すぎて血が流れない感じ」「頭に血流が来ていないので呼吸がうまく入らない、呼吸が行き届かない感じ」を生じることがよくあり、「肝気が頭に溜まるというよりも、肺気虚で、頭だけ気血両虚みたいになる。心腎肺が弱っている結果、肝の問題は良くも悪くも立ち登れない感じ。肝を整えると良さそうだが、肝の動きに他の力が耐えられない予感でイヤがる感じ」とのこと。四君子湯か茯苓飲で、「ぐっと胃に気を集めて脾を呼び覚ます」と、「脾の力が動くことで、どこからともなく、砂漠に水気が戻ってくるように頭に正気が戻ってくる」とのこと。帰脾湯は、「下の胃の方で受け取る力がないから、頭で一層フワフワするだけでより不快」「単にクヨクヨした時はフワッと楽になるから良い。脱力するから休日前しか飲まないけど」「帰脾湯のフワフワは、賦活作用ではない。すごい脱力で、起き上がるのもキツい、フニャーン、フワ〜っと、命が抜けてしまいそうな感じ」とのこと。
四君子湯を選び、六君子湯にしないのは、陳皮や半夏で気が走りすぎて頭、目、咽の表面、胃腸がびりびりとざわついて動きすぎるのだという。
(肝とか腎とかのコトバについては後に説明しますのでここでは気にしないでください)
四君子湯:人参 朮 茯苓 甘草 生姜 大棗 (六君子湯は+陳皮、半夏)
茯苓飲: 人参 朮 茯苓 生姜 枳実 橘皮
帰脾湯: 人参 朮 茯苓 甘草 生姜 大棗 黄耆 当帰 木香 酸棗仁 竜眼肉 遠志
陳皮: 肺、脾の気を巡らせて湿、食積(食べたものが胃腸に残っている、というような意)を除く
半夏: 胸腹部の痞えをとって気を巡らせる
当帰芍薬散はしっくりして、軽度の段階であればフワフワやクラクラが立て直せる。四物湯ではそうならない。
柴胡(柴朴湯)で気が走りすぎて、その結果、粘膜に焼けるような刺激があり、瞼の裏が裂けて潰瘍のようになってしまったことがある。
半夏、厚朴(半夏厚朴湯)や枳実でも気を走らせるが、柴胡がなければ粘膜が裂ける程にはならない。咽の辺りから始まって、結果心窩部がふるふるとぶれる感じが生じるという。枳実でもそのようになるが、茯苓飲では茯苓の降ろす作用で、気の走りすぎがカバーされているようだとのこと。
牡丹皮も、側頭部と子宮において脈や膜を破るような鋭い痛みが生じ、きつくて使えない。(桂枝茯苓丸と温経湯でそうなる)
薏苡仁の煎じは、速やかに同心円状に全身の体表(皮下)へと届いて均一な安定感がある。しかし薏苡仁の末は、咽喉や胃で滞る感じで、体表に向かっていく力やスピードがなく、動的な効果が得られない。
当帰芍薬散: 当帰 芍薬 川芎 朮 茯苓 沢潟
四物湯: 当帰 芍薬 川芎 地黄
柴胡: 気を巡らせる力が強い。気を持ち上げる、鬱々気分を発散させる。
枳実: 気を巡らせる力が強い。胸腹部の痰(粘っこい余分な水分、という意)、食積を除く。補気はしないので漫然と摂ると気を削られ元気がなくなっていく。
牡丹皮: 血を動かす力が強い。
薏苡仁: 四肢のむくみや炎症を除き、筋を緩める。
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●この例が示すように、漢方では体感や力動(下記の、ベクトル性)が重視されます。江部の経方医学、経方薬学はそのことを述べているのだと思います。
『・・中医学の生理・病理・薬理のすべてに、「どこから-どこを通って-どこへ」というベクトル性をはっきりさせなければならない・・そしてこの立場から中医学全般をとらえかえすことで、経方理論の立脚点が形成されています。・・経方理論も理論一般と同様に一つのfictionに過ぎないということです。本書で展開されている人体構造論も一つのvirtual structureに違いないのです。そして経方理論の妥当性と有効性も、現象論的な事実をどれだけ再構成できるか、また臨床的にどれほど機能をするかに懸かっているわけです。』(経方医学 第一巻 江部洋一郎p.208)
勿論、各生薬の体内力動には個人差がありますので、比較的多くの場合これはこのように作用しうる、とのように理解していくことが肝要です。そのような構えがないと独断論的になってしまいます。
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●Q:漢方医学には、中医学と日本漢方の別があるようですが、どういう違いですか?
A:現場ではあまりこだわらなくてもよいところですが、簡単に説明すると、中医学は陰陽五行説に基づいた五臓論(後述します)をモデルとして、人体についての抽象的思索を展開し、病態生理を説明しようと試みます。現代医学の知見は無かった古代中国で、それなりの妥当性をもって考えられたものなのだと思います。しかし、ともするととても思弁的で難渋、晦渋となってしまいます。理論にあてはめて考えようとするとよくありませんが、拘らずに実用的な範囲で活用すればよいと思います。これを全く外して考えるのもやりにくいわけです。
日本漢方は、その中心的人物である吉益東洞(1702-1773)が上記の抽象的思弁を嫌って排除し、実態なるものはブラックボックスとして、□□という症候群→○○湯(この考え方を方証相対と呼びます) とのように捉え、口訣を重視します。中医学からは、理論が無いと揶揄される要因にもなるようです。
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●Q:「気、血、水」とは何ですか?
A:
気
気虚・・元気がない。 補中益気湯など補気剤(気を補充する)を使う
気滞・・気が滞る。 半夏厚朴湯など理気剤(気を巡らす)
血
血虚・・血流が足りない。 四物湯など補血剤
瘀血・・血流が滞る。 桂枝茯苓丸など駆瘀血剤(瘀血を駆逐する、の意)
水(中医学用語では津液)
水毒・・水分の偏在。 利水剤(西洋医学の“利尿剤“ではありません)を使用。
淡:粘稠(ねばねば)な津液の変性物 二陳湯
飲:希薄(さらっと)な津液の変性物 五苓散
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Q:五臓論について簡単に教えてください。
A:イメージ、メタファーとして捉えてください。論理的に定義を明瞭にという観点からは距離があるものです。現代医学的解剖学、生理学の認識はなかった古い中国の先人達が、なるべく実態をうまく言い表そうと言語化を試みた苦労の痕でしょう。
○五臓
心(しん)(心臓というわけではありません) 心の働きと、心臓の働き。
・神明(精神、意識、思考など高次の中枢神経活動)を主る 精神活動を統括する。
・血脈を主(つかさど)る 血を全身に循環させる。
肝(かん)(肝臓というわけではありません、) 情緒、情動、感情に主に連関。
・疏泄(そせつ)を主る 気を全身によどみなく行き渡らせ、精神を安定し、脾胃の消化吸収を助ける。 抑肝散は、肝気の暴走を抑える。(肝気、とは、気を行き渡らせるのは肝の働きであるという観点からの気の動き、というようなことを意味しますが、あまり論理的に拘らない感じでいきましょう)
・血を蔵す 血を貯蔵し、筋や目などに補給する。 蔵血
・筋を主る 筋肉の働きを維持する。
芍薬甘草湯はこむら返りに使う。柔肝(肝気を和らげる)
・目に開竅す 目に通じ、その働きを維持する。
枸杞子、菊花、当帰、地黄 杞菊地黄丸(六味丸+枸杞子、菊花)など
脾(ひ)(脾臓ではなく。消化機能といったところ)
・運化を主る 飲食物を消化吸収し、気・血に換える。 人参等で補脾
・血を統す(脾は統血を主る) 血が脈外にもれるのを防ぐ。 帰脾湯
・昇提を主る 臓腑、器官の位置を維持する。この機能が低下すると胃下垂や、子宮脱などを来す。 補中益気湯
肺(呼吸機能と、外邪侵入を防ぐ皮膚の機能)
・呼吸を主る 大気を吸い、清気をとりこみ、不要な濁気を吐く。
・皮膚を正常に保ち、病気の侵入を予防。皮膚の防衛機能は、衛気(えき)と呼びます。 黄耆
・水を廻(めぐ)らせて調節。
・一身の気を主る 気を生成し、全身の気を調節する。
・宣発と粛降を主る
宣発: 気と津液を全身(上へ外へ)に送る。発汗を促す。 麻黄、桂皮、桔梗
粛降: 気と津液を下(腎、膀胱)に引き込む。発汗を抑える。 芍薬、杏仁
腎(腎臓ではないが、下のほうでエネルギーを底支えするような)
・精(生命的エネルギー)を蔵し、発育生殖を主る。先天の精を持ち、後天の精を脾から受け、成長発達、生殖活動を行う。精のすり減り→老化 地黄
・水を主る 脾、肺と協調して、水分代謝を調節し、尿をつくる。 泌尿器系
・納気を主る 肺の粛降で降りた気を貯える。底力の維持。
・骨を主り、髄を生じ、脳に通ず
・耳と二陰に開竅す 耳、前陰、後陰に通じ、その働きを維持する。 高齢による難聴
○六腑
胃 (脾と連関)
・腐熟を主る 飲食物を受納し、初期の消化を行う。
・降をもって順となす 気の下に降りる働きにより飲食物を小腸に送る。
胆 (肝と連関)
・胆汁の貯蔵と排泄
・決断を主る 驚きやすさ、(現実的な)不安 (竹茹)温胆湯
小腸 (心と連関)
・胃からの水穀を受け入れ、さらに消化
・清濁を分別 清は脾へ、濁は膀胱と大腸へ
大腸 (肺と連関)
・食物残渣から水分を吸収し便をつくる。
膀胱 (腎と連関)
・尿の貯蔵と排泄を行う。
三焦
・諸気を主宰し、全身の気機と気化作用を統轄する。
・水液運行の通路
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Q:六病位について教えてください。
A:傷寒論(漢方の代表的古典)に記載のある、外感病(≒感染症)のステージ分類です。
参考:六経分類…病期の分類
これを慢性病にあてはめる考え方がありますが、私はそれはそこまで有用とは思いません。
邪正相争・・邪気(病的因子)と正気(闘病因子。生命力、抵抗力)の闘争。
六淫外邪・・風、寒、熱、湿、燥、暑 風・・衛気を破壊し他の邪(暑以外)を引き入れる作用のこと。
○太陽病: 風寒邪(寒が外から侵入してくる、というような意味合い)が体表で邪正相争をする(表証)。悪寒、発熱、鼻水、咽頭痛、体表の違和感、節々の痛み、頭痛、浮脈。治療は解表(げひょう=初期の段階で、まだ体の表面に居る邪を中に入らせずに防衛して、追い出してしまう)。麻黄湯(無汗の場合)、桂枝湯(自汗=勝手に汗が出てしまう。皮膚の防衛機能が弱めなのでそうなる)、葛根湯(首のこわばり、頭痛)。邪を中に進行させずに、ここでとどめて、邪を外に追い出したい。風邪の引き始めに葛根湯、は確かに当たることも多いですが、何でも葛根湯でというわけにはいきません。
○少陽病: 少陽の部位(半表半裏。口、咽、胸、横隔膜、上腹部あたり。胃腸のあたり(裏)まではいかない。表と裏の中間あたり)での邪正相争。咳、口が苦い、咽が渇く、微熱、食欲不振、倦怠感、往来寒熱(寒いのと熱いのが時を違えてぎざぎざと交互に到来してくる様相)、弦脈(ビンビンと張る)、胸脇苦満(肋骨の下あたりが痛む、苦しい)、表証の部分症状(頭痛、咽頭痛)と裏症の部分症状(上腹部不快感、嘔気、軟便)。治療は、その場所で邪をなんとかするのですが、主に小柴胡湯などの柴胡剤(生薬の柴胡と黄芩が組み込まれた処方。小柴胡湯など)が使われます。
○陽明病: 邪正相争が激しくなり、主な場所は裏(体の奥の方、胃腸のあたり)。動員された気が熱を発する。治療は熱を冷ます、邪を下から外に出す(主に大便として)。状態に応じて潤したり補ったりもする。白虎加人参湯、承気湯類。
以下の、陰病になると、邪気に正気が押し負けて、熱を発することがもはやできず、冷えて消耗していってしまいます。太陰病→少陰病→厥陰(けっちん)病の順に程度がひどくなります。
○太陰病: 脾の陽が消耗 冷えていく。 温補剤。
○少陰病: 腎・心の陽が消耗
○厥陰病: 機能低下し陰と陽の繋がりを保てず、弱った陽が体外に逃げる。 ex.雪山での矛盾脱衣
コロナについて、「COVID-19 感染症に対する漢方治療の考え方」 金沢大学附属病院漢方医学科 小川恵子先生
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●八綱について。(陰陽虚実表裏寒熱、の8つ。)これもイメージ、メタファーとして捉えてください。
○陰陽
陰・・物質 / 陽・・気、熱、機能
陰虚(陰なるものが虚してしまう、欠乏する)→陽亢(ようこう)・火旺(かおう) 乾いて熱をもつ。夏のアスファルト。 六味地黄丸(87)等で、潤して冷ます。
陽虚→冷える 八味地黄丸(7)(六味丸+桂枝、附子)等。桂枝、附子は温めます。
○虚実 虚は、正気の虚(欠乏)を示します。実は、邪気の実(過剰)を意味します。虚があれば補い、実があれば去る。日本漢方では、体格/体質として、虚証≒華奢で弱い、実証≒がっちり型で強い、とのように捉えるので、中医学と意味を違えています。
○表裏 場所。体表(皮膚というだけでなく、頭部や関節も含みます)か、体の奥の方(≒腸管のあたり)か
○寒熱 冷えているか熱があるか。寒があれば温補して、熱があれば冷まします。
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●脈診について。
脈は、座位か臥位か(姿勢の違い)、時間経過、でもよく変わる。しばらく臥位になって落ち着いていたら弦脈は通常軽減する。
弦脈:交感神経の緊張 ビンビン
按圧して、拉(ひしゃ)げてしまうかどうか(無力、虚)
脈管が硬いかどうか(動脈硬化)
細いか太いか
振幅が大きいか小さいか
流れが滑らかかどろどろか
流速が速い:滑 ゆっくり:渋
体感なので、数値化できる脈拍以外は言語化しにくいですが、多く経験しているとなんとなくわかってきます。力がちゃんとあるのか足りないのか、過敏に動いていないかどうか、滑らかなのか渋るのか・・などをみていきます。
『・・精神科医も、広い意味でやはり身体医でありましてね。脈をとっているうちに、相当荒れた人でも、治まってきます。脈をとること自体が精神療法につながっているのかもしれません。』
治療の時間軸 –長い回復過程をともに歩むために 中井久夫、花輪壽彦対談 より抜粋
「患者さんの心も分かるように、脈をとる」 山田光胤
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●舌診について。
形状 痩せているか(血虚/陰虚)、ぼってりとしているか(胖、歯痕) 歯痕=舌につく歯の痕。 陰虚=陰分、モノ、材料が足りなくて痩せている
舌質 舌の本体のこと。色が薄い(血虚) 紫(瘀血)
舌尖(舌の先端)の赤みは、ストレスによる化熱(=熱に化けている)の故であることが多い。黄連解毒湯などで冷まします。漢方を飲む前にストレス対処が肝要ですが・・
舌苔 熱をもつと黄色くなります。水毒で水が溢れると、膩苔(じたい)(=おから状、べっとり)になります。
舌下静脈(舌の裏側に左右1本ずつある静脈) 瘀血で色が青く太く、蛇行することもあります。
侵襲性への配慮。(脈診も腹診ももちろん)
「私は、舌をみるのは結構怖い」 と中井久夫先生がどこかに書いていました。
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●妊婦への投与について
医療用エキス製剤には禁忌生薬は含まれていない。しかし器官形成期(4-15w)は控えたい。添付文書には一律に、安全性は確立されていない、有益性投与、となっています。
慎用:大黄、芒消、桃仁、紅花、牡丹皮、牛膝、附子、(呉茱萸、厚朴、薏苡仁、半夏、枳実、蘇木)
授乳婦への投与(乳児への影響):大黄は下痢、麻黄(エフェドリン)は興奮やほてり、(牛黄(興奮や血圧上昇))
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●漢方の副作用
麻黄(エフェドリン 心臓、動悸、尿閉、胃腸に負担)
地黄(胃腸に負担、胃もたれ)
黄芩(アレルギー、肝障害)
甘草(偽アルドステロン症 血中カリウム↓、高血圧、浮腫)
附子(口~舌のしびれ、のぼせ、動悸)
大黄(下痢、腹痛 長期連用で大腸メラノーシス→便秘増悪)
山梔子(目の周囲の青色色素沈着、腸間膜静脈硬化症) 加味逍遥散、黄連解毒湯、など長々とは出す勿れ!
当帰、川芎(胃弱の人に胃腸障碍)
桂枝、蘇葉(薬疹)
腸間膜静脈硬化症 主に山梔子による。短期的使用では生じない。年単位で摂ることによる累積の結果である。腸管の血流が鬱滞し、腸管の壁の浮腫、線維化、石灰化を生じ、腸管狭窄(イレウス)を来しうる。手術が必要となる場合もある。
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●参考図書、サイト
『漢方薬の考え方、使い方』加島雅之 ←どれか一冊、ならこれ。中医学。詳しく高度な内容だが顔文字も駆使?されていて読みやすい。(初学者からこれでよいと思う。あまりに簡単な本や、処方をフローチャート的に設えているような本もあるが却って理解しづらいので勧めない)
『生薬と漢方薬の事典』『薬膳と漢方の食材小事典』田中耕一郎 ←各生薬の効能が簡潔にまとまっておりとてもよい。
『漢方薬副作用百科―事例・解説・対策・提言』内藤 裕史
『なんとなくわかった気になる 漢方の歴史』三室洋 (著), 竹本 夕紀 (イラスト) ←簡明でとても有用。
『中国伝統流派の系譜』 黄煌
『山本巌の臨床漢方』山本巌 ←大変便利、有用。
『漢方処方の臨床応用2・3』山本巌 ←上記の加島先生のテキストの次に読むならこれか。とても実際的で大変有用。古本でしか入手できず高値がついてしまっているので私は国会図書館で閲覧した。
『東医雑録1~3』山本巌
『古典に生きるエキス漢方方剤学』小山 誠次 ←大変便利。
『中医臨床のための中薬学』神戸中医学研究会 ←漢方医は必須
『中医臨床のための方剤学』神戸中医学研究会 ←漢方医は必須
『基礎中医学』 神戸中医学研究会編著 ←中医学の基礎理論をしっかり。
『中医学の基礎』平馬直樹 兵頭明 路京華 劉公望
『漢方診療のための中医臨床講義』篠原明徳 ←中医学。詳しく高度な内容だが読みやすい。
『経方医学1~6、経方脈学、経方薬論』江部洋一郎 ←漢方医は必須
『漢方診療のレッスン』花輪壽彦 ←日本漢方。初学者から上級者まで使用可。とても有用。
『漢方医学大全』 ←2022年11月に東洋医学会から出版された、集大成。
『症候による漢方治療の実際』『漢方診療医典』大塚 敬節
『大塚敬節著作集』
『漢方治療百話』矢数道明
『漢方治療の実際』松田邦夫
『臨床医のための漢方薬概論』稲木一元
『漢方治療指針』 幸井俊高 ←よくまとまっていてわかりやすい。薬膳についても。
『中医オンコロジー がん専門医の治療経験集』花 宝金 平崎能郎 ←巻末の、平崎先生による「中国の医療事情」も大変参考になる。
『明解! Dr.浅岡の楽しく漢方 第1巻~』ケアネットDVD 浅岡 俊之 ←初学者のための日本漢方 単純・図式的に過ぎるかもしれないが初学者のとりかかりにはよいかも。
『小説 曲直瀬道三 乱世を医やす人』山崎 光夫
漢方薬のきぐすり.com
伝統医薬データベース 富山大学和漢医薬学総合研究所
国立国会図書館デジタルコレクション
京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
古典籍総合データベース(早稲田大学)
真柳誠先生が公開されている著述等目録
ツムラの漢方スクエア
漢方のたからもの
古典解説 衆方規矩、類聚方広義他