向精神薬について
神経伝達物質neurotransmitter ドパミン(DA)、セロトニン(5-HT)、ノルエピネフリン(NE)(ノルエピネフリン=ノルアドレナリン(NA))、グルタミン酸、γアミノ酪酸(GABA)、アセチルコリン(ACh)、ヒスタミン、アデノシン、・・
受容体receptor 薬や神経伝達物質が結合し、受容体に対してagonist(刺激stimulant)~antagonist(遮断block) として作用する。
*ドパミン受容体:1から5のサブタイプ。D2受容体の遮断が統合失調症の陽性症状改善に有効(ドパミン仮説)。アンフェタミン(覚醒剤)やコカインはドパミンを放出させる。
*セロトニン受容体:多くのサブタイプがある。(セロトニンserotoninは別名5-hydroxytryptamine(5-HT))
5-HT1A:抗不安作用やEPS(extrapyramidal symptom、錐体外路症状)軽減作用
5-HT2A:徐波睡眠を増加、情動の安定、EPS軽減作用。D2遮断過剰を解除し適度なDの状態をもたらすと考えられている。(主に非定型抗精神病薬)
5-HT2c:食欲亢進、肥満と関連する。糖尿病リスクに注意。(主に非定型抗精神病薬)
*ヒスタミン受容体:1から4のサブタイプ。
H1:アレグラはこれを遮断して抗アレルギー剤として働く。中枢神経では、体重増加、睡眠覚醒リズム、眠気、過鎮静、エネルギー消費の調節、と連関する。アレグラは脳に移行しにくいため眠気を生じにくいとされる。遮断を急に止めると、ヒスタミンの刺激が過剰となり、不眠やイライラを来す。
H2:H2ブロッカーであるガスターはこれを遮断して胃酸を抑える。
*アセチルコリン受容体 ムスカリン性(M1~5)とニコチン性(NN、M)とがある。アセチルコリンは、主に副交感神経終末から放出される。末梢での主な作用は、血管拡張、心拍数低下、消化管機能の亢進、発汗等。遮断を急に止めると、AChの刺激が急激に伝わり、不定愁訴、倦怠感、不穏、不眠、不安、悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、イレウス、尿閉、インフルエンザ様症状、等の離脱症状を来す。
M1:遮断すると、便秘、口渇、尿閉と関連。中枢神経でのM1は記憶や認知と連関。
*エピネフリン受容体:α1~2、β1~3
α1:遮断すると、起立性低血圧や過鎮静と連関。
α2A:ADHD治療薬であるguanfacineは、前頭前皮質のニューロンの後シナプスにあるこれを刺激し、シグナル伝達を増強する、と理解されている。
*GABA受容体:A~Cがある。GABAが結合し、Cl-(クロールイオン)チャネルが開口し、Cl-が細胞内に流入し抑制的な神経伝達が生じる。GABAAにbenzodiazepine結合部位があり、benzodiazepineが結合することでGABAA受容体のGABA親和性が高まり、Cl-の流入がより促進される。アルコールにも同様の作用がある。
*NMDA受容体:グルタミン酸が結合。グルタミン酸は、哺乳動物の中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質。旨味の素。シナプス可塑性や、発達期の神経回路網の形成に関与。
*カンナビノイド受容体:カンナビノイドはマリファナの成分。時間感覚や空間感覚の混乱、多幸感、記憶の障碍、痛覚の低下、幻覚など。
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向精神薬をおおまかに分類すると、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、ADHD治療薬、抗不安薬及び睡眠薬、アルコール依存症治療薬、認知症改善薬、抗てんかん薬、等がある。以下、順に解説する。
薬の添付文書は全てネットから閲覧できるので用法用量等はそちらを確認のこと。
一般名(代表的商品名、代表的略号)剤形、最大用量 の形式で記載。
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●抗精神病薬antipsychoticsまたはmajor tranquilizer
ドパミンの脳内経路:
Ⓐ中脳辺縁系:腹側被蓋野から側坐核へ投射。幻覚、妄想といった陽性症状と関連する。報酬系と呼ばれるものでもあり、快感や乱用薬による多幸感もこの系に連関する。
Ⓑ黒質線状体系:黒質から基底核へ投射し、錐体外路系で運動を調節。遮断しすぎると、錐体外路症状EPS extra pyramidal symptomを来す。
ⓒ中脳皮質系:腹側被蓋野から皮質。遮断し過ぎると、陰性症状、認知機能障碍を来す。非定型抗精神病薬は5-HT2A遮断作用を併せもつことにより、D2遮断過剰を抑制し適度なDA状態を保つと考えられ、陰性症状に効果があるとされる。
Ⓓ漏斗下垂体系:視床下部から下垂体前葉に投射し、PRL prolactinプロラクチン分泌を調節。遮断し過ぎると、高PRL血症を来たし、乳汁分泌や生理不順を来す。
従来型(定型)抗精神病薬
butyrophenone系 高力価(D2遮断が強い)
☆haloperidolハロペリドール(セレネース、HPD)(0.75 )(1)(1.5)(3)散、内服液(無味無臭)、静注、デポ剤(ハロマンス(50mg/ml, 100mg/ml)、4週毎に筋注) 効果は強いが、EPSが出易い。長期・多量使用すると副作用の問題が大きい。過感受性精神病(D2受容体の過感受性hypersensitivityと受容体数増加(アップレギュレーション)が関与)の懸念あり。
☆bromperidolブロンペリドール(インプロメン)(1)(3)(6)~36mg haloperidolと類似。EPS、鎮静ともにhaloperidolよりは軽め。
☆timiperoneチミペロン(トロペロン)(0.5)(1)(3) ~12mg 力価高い。akathisiaは頻度高い。それ以外のEPSはHPDより軽め。HPDで症状が改善し難い人に使ってみる。
phenothiazine系 低力価(D2遮断が弱い)
☆chlorpromazineクロルプロマジン(コントミン、ウインタミン、CP)(12.5)(25)(50)(100)細粒10%(細粒の場合、0.01gが正味1mg(0.01gの10%)となる) ~450mg 抗精神病薬の原型(1952年)。D2、α1を主として、ACh、 5HT2A等複数の受容体に親和性をもつ。妙に賦活させたりすることが少なく、間違いがなく確実という印象はある。現在でもよく使われる。私はウインタミンの散剤を少量(3mg/日とか、1mg/回で頓服とか)にして使用することをよくする。
☆levomepromazineレボメプロマジン(レボトミン、LP)(5)(25)(50)散50%、筋注 ~450mg CPよりも鎮静が強い。H1、5HT2A、α1NAを強く阻害。不安焦燥を和らげる。統合失調症やうつで不安や焦燥が強い人に、他の抗精神病薬と併用して使うことも多い。ノイローゼレベルで不安を和らげたい時や、嗜癖状態の緩和にも、依存性がないので使いやすいことがある。退行させるような趣もあり、統合失調症者にこれを大量に投与して退行させて完全看護して治療する、というようなことも試みられたことがあった(西園昌久)。アルコール依存の渇望を緩和する目的で、酒を飲む代わりにこれをのんで我慢するようにと用いることがある。量が多い場合に心臓への影響に注意。抗コリン作用も強いので薬剤性譫妄状態を来しやすい。
☆propericiazineプロペリシアジン(ニューレプチル)(5)(10)(25) ~60mg EPSは比較的出にくい。D2、 5HT2A、 α1を強く阻害。ACh、H1阻害は弱い。鎮静が強い。焦燥や、感情不安定性、攻撃性に用いる。抗コリン作用(認知機能障碍を来してしまう)が少ないため、譫妄にも用いることがある。遅発性ジスキネジアやジストニアの症例において、置換する候補となりうる。
☆oxypertineオキシペルチン(ホーリット)(20)(40) ~100mg EPSは出にくい。前シナプスからNE放出を促進し最終的に枯渇させることによりNE系神経伝達が遮断されることによって抗精神病作用を呈すると考えられている。そのため、時に陽性症状を賦活することがあるので注意。精神賦活効果あり。解離の不安によいともいわれる。遅発性ジスキネジアやジストニアの症例において、置換する候補となりうる。
☆fluphenazineフルフェナジン(フルメジン、FPZ)(0.25 )(0.5)(1) ~10mg、デポ剤(フルデカシン(25mg/ml) 、4週毎に筋注) フェノチアジン系のHPDといわれるほど強力な抗精神病作用。鎮静作用は弱い。効果発現は速い。多くは、0.125~0.75mg程度の少量で、副作用も出さずに、不安、焦燥、過敏性、自生体験によい印象がある。発症前駆の神経過敏な時期に3mg程度までの少量でよく効く場合がある。多いとEPS出易い。
☆perphenazineペルフェナジン(ピーゼットシー)(2)(4)(8)散1%~24mg FPZよりもD2遮断は弱い。統合失調症以外に、術前、術後の悪心・嘔吐、メニエル病のめまい・耳鳴りにも適応(健康保険上の)あり。
☆zotepineゾテピン(ロドピン、メジャピン)(25)(50) ~450mg 躁状態に鋭利に鎮静的に効く。痙攣閾値を下げるので要注意。
☆sulpirideスルピリド(ドグマチール、アビリット、SLP)(50)(100)(200)散 ~1200mg 150mgまでの低用量では、前シナプスのD2自己受容体を阻害し、ドパミン放出を促す。軽度うつ病ならこれだけで治療可能なことも多い。前頭葉のDAが減少してしまって、思考、気分が回らなくなっている状態に良い。うつ的認知様態をほぐして、認知の転換が図られやすくなることにより、うつ状態が改善する。しっかりD2ブロックしないといけないような状態にはこれはしてはならない。高用量では後シナプスのD2受容体を阻害し抗精神病作用を示すが、臨床的にはこのような使われ方はほとんどしない。前記したように、少量で使用することに利点のある薬である。適応範囲は幅広く、不安、過敏、神経症に使いやすい。S(schizophrenia=統合失調症)の初期に使用することもあるが前記したように逆にS的病理を煽ってしまうこともあるので、S病理が初期段階以降の状態ならば通常は避ける。胃薬の側面もあり、胃・十二指腸潰瘍に使用する。食欲増進を来たしやすい。下垂体D2遮断によりPRL(プロラクチン)濃度を上昇させ、用量依存的に月経異常や乳汁分泌(頻度高い!)、男性にはインポテンスを生じさせてしまうことがある。
新規(非定型)抗精神病薬 Ⓑとⓒでの5-HT2A受容体への作用により副作用としての錐体外路症状、認知機能障碍が上記した定型薬と比して出にくくなるという特徴をもつ。
☆clozapineクロザピン 1962年に開発され、EPSや高PRL血症を来さず、高い効果がみられたが、無顆粒球症(白血球の減少)という致命的な副作用が多くみられるため、日本ではようやく2009年に厳しい使用制限の元、認可された。理想的なD2と5-HT2AのKi値(この数値が小さい程、受容体に結合しやすい)の比であるとされる。
☆risperidoneリスペリドン(リスパダール、RIS)(0.5)(1)(2)(3) 、内服液、デポ剤(リスパダールコンスタ、2週毎) ~12mg 4~6mgを超えるとEPSは定型薬と同じように出易くなる。Ⓓの高プロラクチン血症を来たし易く、月経に連関する不調を来させやすい。OLZ程でないが肥満をを来させ易い。clozapineで得られたセロトニン・ドパミン仮説を基にしてヤンセン社が1984年に開発した。内服液はパック詰めとなっており、速効性があり、興奮や情動不穏を抑制するために頓服として頻用される。
☆paliperidoneパリペリドン(インヴェガ)(3)(6)(9) ~12mg RISの活性代謝物。徐放剤であり、1日1回投与(朝食後)。鎮静がRISよりも少ない。
☆olanzapineオランザピン(ジプレキサ、OLZ)(2.5)(5)(10)、ザイディス(口腔内崩壊錠) ~20mg 双極性障碍のうつ状態にも適応がある。糖代謝に障り、糖尿病には禁忌。食欲が無い人には良いのだが、食欲を亢進させ肥満、体重増加を来すことが他の薬剤より目立って多い(このような副作用の出易さは、体質として個々人の遺伝子型に依るものと考えられるが、検査して事前に知ることは現状では不可であり、内服してみないと分らない)。CPに似る。不穏、不安、過敏が柔らかにまとまるという印象。気分安定作用、抑うつ状態改善作用、情緒安定作用に優れる。深睡眠を増加させ睡眠の質を改善。
☆quetiapineクエチアピンQTP(セロクエル)(12.5)(25)(100) ~750mg 双極性障碍の鬱状態にも適応がある。糖代謝に障り、糖尿病には禁忌。これもジプレキサ程ではないが肥満を来し易い。効き方は柔らか。不安緩和、深睡眠増加。鎮静、ふらつきに注意。 D2受容体に対してloose bindingで、過剰な遮断を起こさない。
☆asenapineアセナピン(シクレスト)舌下錠(5)(10) ~20mg 2016年本邦発売。舌下錠であり、舌の下に置いて溶けて吸収される。10分間、飲食やうがいなどせずに待つ。通常の錠剤のように飲んでしまうと効果が無くなる。olanzapineに似ているが体重増加の副作用が顕著ではないとされる。糖尿病に禁忌ではない。
☆aripiprazoleアリピプラゾール(エビリファイ)(3)(6) (12)(24) 散、液 ~30mg 双極性障害における躁症状への保険適応あり。D2受容体部分作動薬dopamin partial agonistとされる。5–HT2Aを遮断する一方、5–HT1Aに部分作動薬として働く。EPS、代謝障害を生じにくいが、akathisiaや、精神症状の増悪(病的賦活をしてしまう)も稀ではなく、使用には熟練を要し、Sの始まりに使うには特に要注意であろう。初期の少量で特にakathisiaを来しやすい。そのためにclonazepamを最初から限定的にだが併用するとよいかもしれない。H1やα1に作用しないため鎮静があまりかからず、不眠が問題となることもある。
☆perospironeペロスピロン(ルーラン) 5–HT1A に部分作動薬として働き、抗不安作用があるとされる。S病理を抑制するに効果が弱い印象があるので、病勢の強い場合には少なくとも第一選択にはなりにくいかもしれない。
☆blonanserinブロナンセリン(ロナセン)(2)(4)(8)散2% ~24mg テープ(20)(30)(40) ~80mg D2の方が5–HT2Aより強いので、DSAと呼ばれることもある。テープは副作用が少なく使いやすい印象。内服せずに貼ればよいという意味合いはなかなか大きい。テープかぶれや、夏は汗で剥がれやすいという問題はある。
☆lurasidoneルラシドン(ラツーダ) (20)(40)(60)(80) ~80mg 一回/日(半減期22h) 双極性障碍の鬱状態にも適応がある。5HT1Aへの部分アゴニストでもあり、perospironeに似る面あり。抗ヒスタミン作用、抗コリン作用は少なく、鎮静や体重増加の副作用が少ない。
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抗精神病薬の副作用:定型抗精神病薬では、低力価(D2遮断の程度)であれば鎮静作用や抗コリン作用に基づく口渇、便秘、自律神経症状が問題となり、高力価であれば錐体外路症状が問題となる。
*錐体外路症状(EPS extrapyramidal symptoms):急性(数日から数週で出現。用量依存性で、減量や中止で改善)と慢性(数ヶ月から数年、明らかな用量依存性はなく、中止後も持続することがあり治療抵抗性)
○パーキンソニズム:D受容体遮断により相対的にACh系が優位となるために生じるとされる。故に抗コリン薬を使用する。振戦、筋強剛、前傾姿勢、歩幅狭小、寡動/無動、表情乏しい、流涎、脂漏
○急性ジストニア:若年男性に多くみられ、頸部後屈、斜頸、開口障害、嚥下障害、眼球上転など。喉頭攣縮では生命の危険も。biperiden筋注。
○急性アカシジア:静座不能とも呼ばれる。下肢のムズムズ感、足踏みをしたり歩き回ったりする。不安、焦燥、内的不穏感等の精神症状と鑑別が難しいこともある。抗精神病薬減量が第一であるが、biperiden、clonazepam、β遮断薬も有効。
○遅発性ジスキネジアTardive Dyskinesia、TD:長期に抗精神病薬を飲んでいる患者さんに生じる。治療が難しいことがある。D2受容体の過感受性hypersensitivityとアップレギュレーションの関与。舌を突き出す、口をもぐもぐさせるなどの口顔面の異常運動の頻度が高い。四肢の舞踏病様運動や体幹をくねらせる運動異常は頻度が低い。
*精神症状:過鎮静、認知機能障碍、抑うつ症状、発作性知覚変容体験
○Awakenings目覚め現象:従来型から新規への切り替えにより生じた日常生活機能の明らかな改善、行動の活性化、周囲の状況の正しい把握、病識の改善。日本ではRISと自殺との関連において語られることが多かったが、昨今は新規抗精神病薬の登場から時が経ったためかあまり言われなくなっている。
*痙攣発作と脳波異常:低力価薬物の方が頻度高い。zotepineやclozapineで多い。
*悪性症候群:高熱、筋緊張亢進、振戦、発汗、頻脈、頻呼吸、血圧異常、意識障碍、高CK血症。抗精神病薬開始後数週以内での発症が多い。増量時や、抗パーキンソン病薬を急激に減薬した時に発症しやすい。低栄養、脱水、身体的不調も契機となりうる。急いで身体的治療をする。
*抗コリン作用:(副交感神経抑制):口渇、鼻閉、かすみ目、眼圧上昇、緑内障悪化、便秘、麻痺性イレウス、尿閉、頻脈、認知機能障碍、軽い意識障碍
*α1遮断:低血圧、めまい、ふらつき、失神、転倒
*内分泌・代謝系:体重増加/肥満(5-HT2cや H1による)、耐糖能異常、性機能障碍、SIADH(Naが漏れてH2Oは体内に貯留される)、水中毒
*肝機能障害
*アレルギー反応
*無顆粒球症 clozapineで特に問題となる。
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●抗パーキンソン病薬(抗精神病薬の副作用抑制)
抗コリン薬 遅発性ジスキネジアを生じ易くしたり、認知機能障碍を来す可能性があるため漫然投与しない。
☆biperidenビペリデン(タスモリン、アキネトン)(1)~6mg 急性ジストニアの時には筋注(5mg/A)
☆trihexyphenidylトリヘキシフェニジル(アーテン)(2)散 ~12mg
抗ヒスタミン薬
☆promethazineプロメタジン(ヒベルナ、ピレチア)~150mg 眠気が出るため眠前使用が多い。抗コリン作用、抗ヒスタミン作用(のため、一般的には抗アレルギー剤に分類される)、抗セロトニン作用など広範。これからCPが開発されたという経緯あり。化学構造的にはphenothiazine系。
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●抗うつ薬
○三環系抗うつ薬 NE、5-HTの再取り込みポンプを阻害し、シナプス間隙のNE、5-HT濃度を増加させることで、抗うつ効果を生じる。
☆imipramineイミプラミン(トフラニール、イミドール)(10)(25) ~150mg 最も古典的な抗うつ薬。抗コリン作用は強い。
☆amitriptylineアミトリプチリン(トリプタノール) 鎮静作用強い。不安、焦燥の目立つうつ病に使用することが多い。
☆nortriptylineノルトリプチリン(ノリトレン)(10)(25) ~150mg amitriptylineの代謝産物。抗コリン作用はいくらか弱いとされる。NE取り込み阻害が顕著であり、意欲低下が目立つうつ病患者に適する。眠気はあまり出ない。
☆clomipramineクロミプラミン(アナフラニール) 三環系抗うつ薬の中ではセロトニン選択性が強い。不安、心気症、強迫に。鎮静が強いので、興奮、焦燥にも有効。
○四環系抗うつ薬
☆maprotilineマプロチリン(ルジオミール)(10)(25) ~75mg NA再取り込み阻害。5-HT再取り込み阻害作用は無い。抗コリン作用は弱い。H1遮断は強い。皮疹、痙攣(三環系に比して3倍)の副作用あり。
☆mianserinミアンセリン(テトラミド)(10)(30) ~60mg 主にシナプス前α2受容体遮断によりNEを活性化。意欲低下改善作用は期待し得る。5-HT2A受容体遮断やH1受容体遮断作用も有する。抗鬱作用の発現は早いとされる。睡眠薬ではないが睡眠を良くし、譫妄に用いられることもある。
☆setiptilineセチプチリン(テシプール)(1) ~6mg mianserinと同様、主にシナプス前α2受容体遮断によりNEを活性化。作用は強くはないが副作用も少ない。
○SSRI selective serotonin reuptake inhibitor 5-HT再取り込み阻害に特化している。他の受容体への作用が少なく、副作用が少ないとされる。投与初期に悪心の副作用が多い。ガスモチン(5-HT4作動薬。胃や大腸でAChが分泌され、胃腸の運動が活発になる)を併用すると良い。離脱症状(頭痛、消化器症状、異常感覚(シャンビリ)、易怒性など)は目立つ(特にparoxetine)。
☆fluvoxamineフルボキサミン(ルボックス、デプロメール)(25)(50)(75) ~150mg(OCDに300mgまで使用することもある) 他の薬物との相互作用が多いので注意。
☆paroxetineパロキセチン(パキシル)(5)(10)(20) ~40mg (CR錠は(12.5)(25) ~50mg) SSRIの中でも効果が比較的強い。
☆sertralineセルトラリン(ジェイゾロフト)(25)(50) ~100mg 副作用、相互作用が比較的少なく、SSRIの中では使いやすい。若干のドパミン再取り込み阻害作用を有するため、意欲の低下に有効である可能性がある。
☆escitalopramエスシタロプラム(レクサプロ)(10) ~20mg 相互作用は少ない。QT延長について注意。
○S-RIM セロトニン再取り込み/セロトニン受容体モジュレーター
☆vortioxetineボルチオキセチン(トリンテリックス)(10)(20) ~20mg 本邦では2019年に上市。初期の嘔気以外の副作用が少なく使いやすい。
○SNRI selective serotonin and noradrenaline reuptake inhibitor NEと5-HT再取り込み阻害に特化している。
☆milnacipranミルナシプラン(トレドミン)(12.5)(15)(25)(50) ~100mg 腎代謝。相互作用少ない。
☆duloxetineデュロキセチン(サインバルタ)(20)(30) ~60mg milnacipranより再取り込み阻害作用が強い。慢性疼痛にも使用。離脱症状が目立つ印象。
☆venlafaxineベンラファキシン(イフェクサー)(37.5)(75) ~225mg 2015年から日本で認可。日本では臨床試験で結果が出ず、2000年に一度断念されている経緯がある。
○NaSSA (noradrenergicand specific serotonergic antidepressants)
☆mirtazapineミルタザピン(リフレックス、レメロン)(15) ~45mg mianserinと似て、シナプス前α2受容体遮断によりNEを活性化する。5-HT1A受容体刺激作用あり。強い抗H1作用もあり、眠気、鎮静、体重増加は目立つ。眠れず、食欲低下したうつ病には良い。
○SARI(Serotonin 2 Antagonist and Reuptake Inhibitor)
☆trazodoneトラゾドン(レスリン)(25)(50) ~200mg 弱い5-HT再取り込み阻害作用。抗H1は弱い。抗α1、抗5-HT2Aは強く、各々起立性低血圧(鎮静)、深睡眠増加をもたらす。抗うつ作用というより、睡眠の質改善を考える時に使用することが多い。
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●気分安定薬または感情調整剤mood stabilizer 双極性感情障害(躁鬱病)や、気分調節に支障がある場合に用いる。
☆lithium炭酸リチウム(リーマス、Li)(100)(200) ~1200mg (治療血中濃度0.5 mEq/l~1.2 mEq/l) 神経細胞突起の伸長、神経細胞の成長円錐拡大、抗アポトーシスなどを介した神経保護作用によると考えられている。古典的躁病、多幸的躁状態に有用。うつ病の増強療法としても用いる。腎排泄であり、腎機能に注意。甲状腺機能低下に注意。 副作用:口渇、多飲、多尿、手指振戦、嘔気、下痢など。中毒域に至らぬように血中濃度の定期的チェックが必須。
☆carbamazepineカルバマゼピン(テグレトール、CBZ)(100)(200) ~1200mg(治療血中濃度4μg/ml~12μg/ml)抗てんかん薬。急速交代型の躁うつ病、不快気分を伴う躁状態、躁うつ混合状態にはLiより有効とされる。易怒性、衝動性にも用いる。代謝酵素(CYP3A4)を誘導し、他の抗精神病薬(haloperidolなど)の血中濃度が低下するほか、同じ投与量でもcarbamazepine自体の血中濃度が次第に低下してゆくため、血中濃度測定は欠かせない。三叉神経痛などの疼痛にも使用される。特に初期に失調症状(ふらつき)が出るため、少量から丁寧に増量。アレルギー反応が他薬より多い。スティーブンス・ジョンソン症候群等の重篤な皮膚症状が副作用として出現し得るので、皮膚症状が出てきたら直ちに止めること。
☆sodium valproateバルプロ酸(デパケン、セレニカ、バレリン、VPA)(100)(200) ~1200mg (治療血中濃度50μg/ml~125μg/ml)抗てんかん薬。急速交代型の躁うつ病、不快気分を伴う躁状態、躁うつ混合状態にはLiより有効とされる。易怒性や易刺激性にも用いる。精神発達遅滞に伴う易怒性には抗精神病薬よりも有用なことがある。脳血管性認知症に伴う感情失禁などにも効果を示すことがある。高アンモニア血症に注意。催奇形性が高く、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には原則禁忌となっている。
☆lamotrigineラモトリギン(ラミクタール、LTG)(25)(100) ~400mg 抗てんかん薬。躁を抑えるには弱いが、双極性障碍における気分エピソードの再発・再燃抑制に用いられる。残念ながらアレルギー反応、皮疹が多く、10人に一人程度ともいわれる。
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●ADHD治療薬
☆methylphenidateメチルフェニデート(コンサータ)(18)(27)(36) ~54mg(6歳~18歳未満) ~72mg 医師も薬局も患者もADHD適正流通管理システムへの登録が必要である。朝内服して夕刻まで効く(12時間程度)。日々飲んで徐々に効いてくるというわけではないので、これが効くかどうか(responderであるかどうか)の判定は1週間程度でよい。中枢神経刺激薬。ADHD以外の病因がないケースには驚く程効くことがよくある。ドパミントランスポーター(DAT)に結合し、シナプス間隙におけるドパミン再取り込みを阻害することでドパミンの作用を増やす。腹側被蓋野から側坐核へのドパミン投射(報酬系)にも作用するため依存性を生む。しかし、リタリン(徐放製剤ではないmethylphenidate)濫用が社会的に問題となった後、徐放剤であるコンサータが上記システムの管理下にて使用されることとなり、依存性が問題になることは少なくなった。依存性は、速効性(摂ったらすぐ作用を実感するということ)に依るところが大きいため、ゆっくりと効いてくる徐放剤では依存性が生じにくい。耐性もあるが、それが顕著に問題となることは少ないものと思われる。子どもの場合、耐性のためではなく身体が大きくなるので増量せねばならないことがよくある。食欲不振(頻発。ガスモチン(胃薬)が効くことが多いのでよく併用される)や頭痛、不眠、子どもの成長障碍に注意。成長障碍(背丈)については、長期的にみれば追いつき、内服したために背の低い大人になってしまうということは無いと現在のところ理解されている。統合失調症的素因のある場合(ADHDとされる児に散見されるが)、その病理を煽りかねない(ドパミンに関して抗精神病薬とは逆のことをする)。それで医源的に不安定になっている児が臨床上散見される。本邦ではチックには禁忌となっている(チックもドパミン過剰が要因として考えられており治療薬として抗精神病薬を使用する)。
☆lisdexamfetamineリスデキサンフェタミン(ビバンセ)(20)(30)~70mg(6歳~17歳のみ使用可)これもADHD適正流通管理システムへの登録が必要。アンフェタミンのプロドラッグ。DAとNE再取り込み阻害、シナプス小胞へのDAとNE取り込み阻害。作用はmethylphenidateと同じだがより効果が強い。
☆atomoxetineアトモキセチン(ストラテラ)(5)(10)(25)(40) ~120mg(小児は体重に合わせて調整) 非中枢刺激薬。朝夕分2で内服し、飲み続けて徐々に効果が出てくることを期待する。ノルエピネフリントランスポーター(NET)を遮断し再取り込みを阻害、シナプス間隙におけるNEの作用を増やす。選択的NE再取り込み阻害薬(NRI selective noradrenaline reuptake inhibitor)である。前頭前野にはDATが少ないがNETがDAの再取り込みも行っており、前頭前野のDAも増強されることとなる。報酬系に障らないため依存性の問題がない。少量から漸増。これはmethylphenidateとは違って、毎日内服して数週~1、2ヶ月で徐々に効いてくる。このため、効果判定に時間がかかる。副作用は、頭痛、食欲低下、傾眠、悪心・嘔吐、便秘、血圧・心拍数の上昇、躁転(NE取り込み阻害による)。
☆guanfacineグアンファシン(インチュニブ)(1)(3) 1日1回夕刻内服。選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬。非中枢刺激薬。シナプス後の同受容体を刺激して、前頭葉においてはシグナル伝達を増強(注意機能の改善)し、青斑核や扁桃体においては抑制的に作用し情動反応、交感神経を鎮める(過剰な活動性、衝動性、攻撃的行動を抑制)と考えられている。副作用は、眠気/鎮静、血圧低下、徐脈、ふらつき、頭痛。睡眠が良くなるという作用も期待し得る。米国では、衝動性が高い場合に中枢刺激薬に追加されることが多い。
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●抗不安薬minor tranquilizer
ほとんどはbenzodiazepineベンゾジアゼピン系である。GABA(γアミノ酪酸)受容体に結合することでCl-(クロールイオン)チャネルが開口し、Cl-が細胞内に流入し抑制的な神経伝達が生じる。依存性や耐性があり、濫用に至る場合もある。漫然投与されて、減薬・中止への動機を喪うケースを多くみる。頓服としてあるいは期間限定(4週以内)として注意深く用いる。日本は欧米に比してこれの処方量が相当多い。アルコールの作用に類似する。深刻な副作用として(飲酒の悪影響を想起するとよいが)、脱抑制による衝動性の亢進、興奮。離脱症状として、イライラ、不安や抑鬱、パニック様発作、頭痛、皮膚がぴりぴりする、光や音の過敏性、耳鳴り等(“シャンビリ”= シャンシャンという耳鳴りとビリビリする脳の衝撃感)の心身症状がある。
短期作用型
☆etizolamエチゾラム(デパス)(0.5)(1) 海外ではあまり使われないが本邦では頻用される。精神科以外の医師が長期的投薬をしているのを散見するので嘆かわしい。筋弛緩作用が強い。依存形成は強い。(強く、即効である程、依存性は強い)
☆clotiazepamクロチアゼパム(リーゼ) (5)(10) 低力価でマイルド。
中期作用型
☆lorazepamロラゼパム(ワイパックス、ユーパン)(0.5)(1) 強い抗不安作用。抗痙攣作用や筋弛緩作用は少ない。S患者の精神病性興奮を抑えるためにも使用されることがある。代謝過程が単純で、肝機能障害例にも使用しやすい。反跳症状や離脱症状を生じやすい。
☆alprazolamアルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス、メデポリン)(0.4)(0.8) 持続時間は比較的短い。依存性は強い。
☆fludiazepamフルジアゼパム(エリスパン)
☆bromazepamブロマゼパム(レキソタン)(1)(2)(5) 2mg錠は頓服として使われることが多いようである。
☆clonazepamクロナゼパム(リボトリール、ランドセン)(0.5)(1)(2)散 ~6mg 抗てんかん薬でもある。眼球上転や手指振戦にも使用。akathisia、restless legs syndromeにも。それなりに強いので量の調整に注意。多いと眠気、ふらつき。私はbenzodiazepine系を使用する必要がある場合はほぼこれしか用いない。
長期作用型
☆diazepamジアゼパム(セルシン、ホリゾン、ダイアップ)(2)(5)(10) 麻酔導入時、術前投与、アルコール離脱症状、痙攣重積に使われることが多い。
☆cloxazolamクロキサゾラム(セパゾン) (1)(2)散1%
超長期作用型
☆ethyl loflazepateロフラゼプ酸エチル(メイラックス、メデタックス) 超長時間作用であり、短期作用型の減量のために置き換えに使用することがある。
☆tofisopamトフィソパム(グランダキシン)(50)散~150mg 他のbenzodiazepineと違い、1,5-benzodiazepineである。抗不安効果はあまりないが、自律神経系への効果があるとされる(のぼせ、血流障害など)。副作用も少ない。精神科ではあまり使わない。
5-HT1A部分作動薬
☆tandospironeタンドスピロン(セディール)(5)(10)(20)~60mg benzodiazepineではない。依存性のない抗不安薬とされている。効果は弱めで、作用時間は短い。効果発現まで2週間程度かかる。抗うつ効果の報告もある。perospironeの原型となった。
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●睡眠の薬
benzodiazepineが使用されることが未だ多いが、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬が使用できるようになっている。
benzodiazepineはREMと深睡眠量を減少させ、睡眠段階2を増加させる(寝かせるが睡眠を深くするわけではない)。大脳辺縁系に多数分布するGABAA受容体に作用し、GABAの作用を強め、Cl-流入を促進、神経活動を抑制する。ω1受容体(GABAAα1サブユニットにある。小脳、黒質などに多く分布)(鎮静)とω2受容体(GABAAα2,3,5サブユニットにある。脊髄や海馬などに多く分布)(抗不安、抗痙攣、筋弛緩)とがあり、zopiclone、zolpidemはω1選択性があり、ω2の筋弛緩作用が少ないので鎮静・ふらつきがが少ないとされる。ω2の抗痙攣作用に連関し、大量内服後中断で反跳性の痙攣発作を起こすことがある。
逆行性健忘を起こしうる。 せん妄、不穏の原因となり得る。呼吸抑制作用(呼吸筋の弛緩)もある。入眠困難があれば短時間型を、中途覚醒があれば中時間~長時間型を使う。短時間型は依存形成が強く、中止により反跳性不眠を起こすため止めにくくなる。中~長時間型は翌日の日中まで眠気が残ることがある。
鎮静作用の強い抗精神病薬(olanzapine、quetiapine、levomepromazine、chlorpromazine等)や抗うつ薬(trazodone、mianserin、amitriptyline等)を、睡眠の質改善のために使用することは多い。
○超短時間型
☆triazolamトリアゾラム(ハルシオン)(0.125)(0.25) ~0.5mg 超短時間作用型。入眠作用は強い。逆行性健忘の副作用は多い。依存性が社会問題化したこともある。筋弛緩作用強い。連用に至ると反跳性不眠は強い。
☆zolpidemゾルピデム(マイスリー)(5)(10) ~10mg ω1 receptor選択性で、抗不安作用、筋弛緩作用はないとされる。短時間作用型。依存形成も少ないとされる。反跳性不眠も少ないとされる。
☆zopicloneゾピクロン(アモバン)(7.5)(10)~10mg ω1 receptor選択性。朝、口が苦くなるという副作用がある。
☆eszopicloneエスゾピクロン(ルネスタ)(1)(2)(3) ~3mg ラセミ体(R体とS体の等量混合物)であるzopicloneを光学分割して得られるS体。薬理活性の大部分はS体によるものなので、従来のゾピクロンの半量で同等の効果が得られる。欧州では、zopicloneと違いがないとされ、新薬として認められなかった。ω1への選択性が強いが、ω2への親和性もあり、抗不安作用も期待できるとされる。半減期はzopicloneよりやや長い(約5時間)ため、睡眠維持効果も期待しうる。
○短時間型
☆brotizolamブロチゾラム(レンドルミン)(0.125 )(0.25) ~0.25mg 催眠、抗不安、筋弛緩。
☆rilmazafoneリルマザホン(リスミー)(1)(2) ~2mg 効果は弱め。
☆lormetazepamロルメタゼパム(ロラメット、エバミール)(1) ~2mg brotizolamよりも効果は軽めだが、似ている。代謝がグルクロン酸抱合のみで肝機能障碍のある場合に使いやすい。
○中間型
☆nitrazepamニトラゼパム(ベンザリン、ネルボン)(2)(5)(10)散 ~10mg 強力な鎮静作用と睡眠持続作用がある。
☆flunitrazepamフルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)(1)(2)静注2mg/ml ~2mg nitrazepamに似る。
☆estazolamエスタゾラム(ユーロジン)(1)(2) ~4mg flunitrazepamより軽め。
☆nimetazepamニメタゼパム(エリミン)(3)(5) ~5mg nitrazepamと似る。
○長時間型
☆flurazepamフルラゼパム(ダルメート、ベノジール)(10)(15) ~30mg 効果は軽め。依存を形成しにくいとされる。日中の不安軽減効果もある。
☆quazepamクアゼパム(ドラール)(15)(20) ~30mg ω1選択性が高く、催眠作用に比して筋弛緩作用は弱い。依存性は少なめ。
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○メラトニン受容体作動薬 メラトニン自体はサプリメントとして使用している方も多い。
☆ramelteonラメルテオン(ロゼレム) 視床下部視交叉上核に存在するメラトニン受容体に作用。催眠効果(メラトニンⅠ型受容体作用)と概日リズム調整作用(メラトニンⅡ型受容体作用)。睡眠相後退症候群でリズムを前方修正するためには、夕刻早め、毎日同時刻に内服し、リズムが徐々に(週単位でみていく)整うことが期待される。
○オレキシン受容体拮抗薬 オレキシンは覚醒レベルを上昇させ覚醒を維持する作用を担い、それを阻害して睡眠を誘発する。依存性はbenzodiazepine系と違い基本的にはないとされる。
☆suvorexantスボレキサント(ベルソムラ)(10)(15)(20)
☆lemborexantレンボレキサント(デエビゴ)(2.5)(5) (10) ~10mg
○バルビタール酸系 強力だが、依存性耐性が強い。大量服薬時の危険性も高い。特殊な場合以外は使わない。
☆phenobarbitalフェノバルビタール(フェノバール) 抗てんかん薬である。
*ベゲタミンA、ベゲタミンB…phenobarbital(A:40mg、B:30mg)、chlorpromazine(A:25mg、B:12.5mg)、promethazine(A,B共に12.5mg)の合剤。
☆amobarbitalアモバルビタール(イソミタール)
☆pentobarbitalペントバルビタール(ラボナ)
○その他
☆bromovalerylureaブロムワレリル尿素(ブロバリン) 通常は臨床で使われることはない。
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●むずむず脚症候群restless legs syndrome(RLS)の薬物
☆clonazepamクロナゼパム(リボトリール、ランドセン) 既述
☆pramipexoleプラミペキソール(ビ・シフロール)(0.125)(0.5)~0.75mg
☆rotigotineロチゴチン(ニュープロ)(パッチ:2.25・4.5・9・13.5mg/枚)~6.75mg
☆gabapentin enacarbilガバペンチン エナカルビル(レグナイト)(300)~600mg
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●アルコール依存症の薬物
☆acamprosateアカンプロセート(レグテクト)(333mg/錠)6錠分3食後。 アルコール依存症で亢進したグルタミン酸作動性神経活動を抑制することで、飲酒欲求を抑制する。アルコール依存症の診断基準を満たす場合のみに、離脱症状の治療が終了してから、心理社会的治療と併用し、断酒の意志がある場合のみに使用すること。
☆cyanamideシアナミド(シアナマイド)水剤。1日50~200mg(1%溶液として5~20mL)を1~2回に分割経口服用する。抗酒薬または嫌酒薬と呼ばれる。肝臓のアルデヒド脱水素酵素を阻害し、アルコールが分解されなくなり、飲酒すると体内にアセトアルデヒドが蓄積し、発汗、頭痛、動悸、嘔気嘔吐など不快症状が出現する。そのため、飲酒に歯止めがかかる。disulfiramに比べて効果が早く表れ(5分程度)、12~24時間持続する。副作用として、肝障害、皮疹、末梢神経障碍、錯乱等。
☆disulfiramジスルフィラム(ノックビン) 機序はcyanamideと同様。1日0.1~0.5g(粉で、0.1g/包)を1~3回に分割経口服用する。副作用として、肝障害、皮疹、白血球減少等。
(ノックビンは世界各国で使用されているが、シアナマイドは本邦とスペインなどの少数の国でしか認可されていない。本邦の医療機関ではシアナマイド:ノックビン=7:3)
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●認知症の薬物
☆donepezilドネペジル(アリセプト)(3)(5)(10) D錠(口腔内崩壊錠)、内服ゼリー、散 ~10mg AChEアセチルコリンエステラーゼ阻害薬。AChの分解を阻止し、脳内コリン作動性神経系を賦活し、認知機能全般の賦活効果が期待される。初期に、悪心の副作用が多い。興奮などのBPSDがある場合は悪化させる可能性があるので、ガランタミンを優先する方がよいであろう。副作用で悪心が目立つ場合は、リバスチグミンパッチで代替する。あくまで進行遅延効果である。DLBはADよりも脳内コリン作動性神経の機能低下が著明であり、本剤が中核症状のみならず幻視などのBPSDに対しても有効なことがしばしばある(保険適用はないが)。
☆galantamineガランタミン(レミニール)(4)(8)(12)、OD錠(口腔内崩壊錠)、液4mg/1ml、8mg/2ml、12mg/3ml ~24mg AChEアセチルコリンエステラーゼ阻害薬。心疾患既往歴のある人には要注意。進行が早い早発性ADへの効果が優れている可能性がある。興奮や焦燥の抑制、睡眠改善などの鎮静効果が得られる。BPSDを呈していて鎮静を図りたい場合は本剤を優先し、賦活効果を期待する場合はdonepezilを優先するとよい。
☆rivastigmineリバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ) パッチ(4.5)(9)(13.5)(18) ~18mg AChEアセチルコリンエステラーゼ阻害薬。背部、上腕部、胸部の皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替える。かぶれや発赤などが出現することがある。末梢性のコリン系有害作用が軽度であるため、消化器症状等の副作用を来しにくい。腎排泄。
☆memantineメマンチン(メマリー)(5)(10)(20) ~20mg グルタミン酸(興奮性神経伝達物質)受容体の一つであるNMDA受容体拮抗作用をもち、AChE阻害薬とは機序が異なる。認知機能低下のみならず、BPSDの緩和にも有用である。ADではシナプス間隙のグルタミン酸濃度が持続的に上昇し、神経伝達シグナルが阻害され、記憶・学習機能を障害する。また、βアミロイドがNMDA受容体のグルタミン酸認識部位に結合し細胞内にCa2+が過剰流入して神経細胞を傷害する。memantineはNMDA受容体に拮抗し、過剰なCa2+流入を抑える。また、グルタミン酸の神経興奮毒性に対して保護的に作用するのではないかと考えられている。AChE阻害薬に併用すると良いとされる。頭痛、目眩といった副作用が出やすい。
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●抗てんかん薬
☆sodium bromide臭化ナトリウム
☆Phenobarbitalフェノバルビタール(フェノバール、PB)
☆phenytoinフェニトイン(ヒダントール、アレビアチン(注射液)、PHT)(25)(100) ~300mg
☆ethosuximideエトサクシミド(エピレオプチマル、ザロンチン、ESM)
☆carbamazepineカルバマゼピン 気分安定薬の項で既出(双極性障碍の治療薬)
☆valproic acidバルプロ酸 気分安定薬の項で既出(双極性障碍の治療薬)
☆clonazepamクロナゼパム benzodiazepine。抗不安薬の項で既出
☆zonisamideゾニサミド(エクセグラン、ZNS)(100)細粒20% ~600mg
☆clobazamクロバザム(マイスタン、CLB)(5)(10)細粒1% ~40mg benzodiazepine系。
☆gabapentinガバペンチン(ガバペン、GBP)(200)(300)(400)
☆topiramateトピラマート(トピナ、TPM)(25)(50)(100)細粒10%
☆lamotrigineラモトリギン 気分安定薬の項で既出(双極性障碍の治療薬)
☆levetiracetamレベチラセタム(イーケプラ、LEV)(250)(500)
☆stiripentolスチリペントール(ディアコミット、STP)ドライシロップ分包(250)(500)カプセル(250)
☆rufinamideルフィナミド(イノベロン、RUF / RFN)(100)(200)
☆perampanelペランパネル(フィコンパ、PER)(2)(4)細粒1%
☆lacosamideラコサミド(ビムパット、LAC)(50)(100)
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参考図書:
ストール精神薬理学エセンシャルズ 神経科学的基礎と応用 第4版 仙波純一、松浦雅人 訳
精神科薬物療法のプリンシプル 仙波純一
精神科医はくすりを出すときこう考える 仙波純一
抗精神病薬の「身体副作用」がわかる―The Third Disease 長嶺 敬彦